笔杆子(http://rendoc.com):宫崎骏动画电影《千与千寻》的日文剧本
「千と千尋の神隠し」的日文剧本
1~父:千尋。千尋、もうすぐだよ。母:やっぱり田舎ねー。買い物は隣町に行くしかなさそうね。父:住んで都にするしかないさ。ほら、あれが小学校だよ。千尋、新しい学校だよ。母:結構きれいな学校じゃない。「しぶしぶ起きあがってあかんべをする千尋。」千尋:前の方がいいもん。…あっ、あああ!おかあさん、お花しおれてっちゃった!母:あなた、ずーっと握りしめてるんだもの。おうちについたら水切りすれば大丈夫よ。千尋:初めてもらった花束が、お別れの花束なんて悲しい…母:あら。この前のお誕生日にバラの花をもらったじゃない?千尋:一本ね、一本じゃ花束って言えないわ。母:カードが落ちたわ。窓開けるわよ。もうしゃんとしてちょうだい!今日は忙しいんだから。タイトル父:あれ?道を間違えたかな?おかしいな…母:あそこじゃない?ほら。父:ん?
2~母:あの隅の青い家でしょ?父:あれだ。一本下の道を来ちゃったんだな。…このまま行っていけるのかな。母:やめてよ、そうやっていつも迷っちゃうんだから。父:ちょっとだけ、ねっ。千尋:あのうちみたいの何?母:石のほこら。神様のおうちよ父:おとうさん、大丈夫?父:まかせとけ、この車は四駆だぞ!千尋:うぁっ―母:千尋、座ってなさい。千尋:あっ、うわっ…わっ、わっ!ぅああああああっ!母:あなた、いいかげんにして!父:行き止まりだ!母:なあに?この建物。父:門みたいだね。母:あなた、もどりましょう、あなた。千尋?…もぅ。父:何だ、モルタル製か。結構新しい建物だよ。千尋:…風を吸込んでる…
3~母:なぁに?父:ちょっと行ってみない?むこうへ抜けられるんだ。千尋:ここいやだ。戻ろうおとうさん!父:なーんだ。恐がりだな千尋は。ねっ、ちょっとだけ。母:引越センターのトラックが来ちゃうわよ。父:平気だよ、カギは渡してあるし、全部やってくれるんだろ?母:そりゃそうだけど…千尋:いやだ、わたし行かないよ!戻ろうよ、おとうさん!父:おいで、平気だよ。千尋:わたし行かない!うぅ…あぁっ!母:千尋は車の中で待ってなさい。千尋:ぅぅ…おかあさーん!まってぇーっ!父:足下気をつけな。母:千尋、そんなにくっつかないで。歩きにくいわ。千尋:ここどこ?母:あっ。ほら聞こえる。千尋:…電車の音!母:案外駅が近いのかもしれないね。父:いこう、すぐわかるさ。
4~千尋:こんなとこに家がある…父:やっぱり間違いないな。テーマパークの残骸だよ、これ。90年頃にあっちこっちでたくさん計画されてさ。バブルがはじけてみんな潰れちゃったんだ。これもその一つだよ、きっと。千尋:えぇーっ、まだいくの!?おとうさん、もう帰ろうよぅ!ねぇーーーっ!千尋:おかあさん、あの建物うなってるよ。母:風鳴りでしょ。気持ちいいとこねー、車の中のサンドイッチ持ってくれば良かった。父:川を作ろうとしたんだねー。ん?なんか匂わない?母:え?父:ほら、うまそうな匂いがする。母:あら、ほんとね。父:案外まだやってるのかもしれないよ、ここ。母:千尋、はやくしなさい。千尋:まーってー!父:ふん、ふん…こっちだ。母:あきれた。これ全部食べ物屋よ。千尋:誰もいないねー。父:ん?あそこだ!おーい、おーい。はぁー。うん、わぁ。
5~こっちこっち。母:わぁー、すごいわねー。父:すみませーん、どなたかいませんかー?母:千尋もおいで、おいしそうよ。父:すいませーん!母:いいわよ、そのうち来たらお金払えばいいんだから。父:そうだな。そっちにいいやつが…母:これなんていう鳥かしら。…おいしい!千尋、すっごくおいしいよ!千尋:いらない!ねぇ帰ろ、お店の人に怒られるよ。父:大丈夫、お父さんがついてるんだから。カードも財布も持ってるし。母:千尋も食べな。骨まで柔らかいよ。父:辛子。母:ありがと。千尋:おかぁさん、おとぅさん!「諦めて歩き出す千尋。油屋の建物を見つける。」千尋:へんなの。千尋:電車だ!…?ハク様:…!ここへ来てははいけない!すぐ戻れ!千尋:えっ?ハク様:じきに夜になる!その前に早く戻れ!
6~…もう明かりが入った、急いで!私が時間を稼ぐ、川の向こうへ走れ!千尋:なによあいつ…「明かりが入ると同時に、たくさんの影が動き出す。」千尋:……!おとうさーん!おとうさん帰ろ、帰ろう、おとうさーん!「座っていた豚が振り向く。」千尋:ひぃぃ…っ「豚がたたかれて倒れる。」豚:ブギィィィ!千尋:ぅわぁあーっ!おとおさーん、おかあさーん!おかあさーん、ひっ!ぎゃああーーっ!千尋:ひゃっ!…水だ!うそ…夢だ、夢だ!さめろさめろ、さめろ!さめてぇ…っ…これはゆめだ、ゆめだ。みんな消えろ、消えろ。きえろ。あっ…ぁあっ、透けてる!ぁ…夢だ、絶対夢だ!「船が接岸し、春日さまが出てくる。」千尋:ひっ…ひっ、ぎゃあああーーっ!「千尋を捜すハク。暗闇にいる千尋を見つけて肩を抱く。」
7~千尋:っっっ!ハク様:怖がるな。私はそなたの味方だ。千尋:いやっ、やっ!やっっ!ハク様:口を開けて、これを早く。この世界のものを食べないとそなたは消えてしまう。千尋:いやっ!…っ!?ハク様:大丈夫、食べても豚にはならない。噛んで飲みなさい。千尋:…ん…んぅ…んー…っハク様:もう大丈夫。触ってごらん。千尋:さわれる…ハク様:ね?さ、おいで。千尋:おとうさんとおかあさんは?どこ?豚なんかになってないよね!?ハク様:今は無理だけど必ず会えるよ。…!静かに!「ハクが千尋を壁に押しつけると、上空を湯バードが飛んでいく。」ハク様:そなたを捜しているのだ。時間がない、走ろう!千尋:ぁっ…立てない、どうしよう!力が入んない…ハク様:落ち着いて、深く息を吸ってごらん…そなたの内なる風と水の名において…解き放て…立って!千尋:あっ、うわっ!「走り出す二人。」
8~ハク様:…橋を渡る間、息をしてはいけないよ。ちょっとでも吸ったり吐いたりすると、術が解けて店の者に気づかれてしまう。千尋:こわい…ハク様:心を鎮めて。従業員:いらっしゃいませ、お早いお着きで。いらっしゃいませ。いらっしゃいませ。ハク様:所用からの戻りだ。従業員:へい、お戻りくださいませ。ハク様:深く吸って…止めて。「カオナシが千尋を見送る。」湯女:いらっしゃい、お待ちしてましたよ。ハク様:しっかり、もう少し。青蛙:ハク様ぁー。何処へ行っておったー?千尋:…!ぶはぁっ青蛙:ひっ、人か?ハク様:…!走れ!青蛙…ん?え、え?「青蛙に術をかけて逃げるハク。」従業員ハク様、ハク様!ええい匂わぬか、人が入り込んだぞ!臭いぞ、臭いぞ!ハク様勘づかれたな…
9~千尋ごめん、私息しちゃった…ハク様いや、千尋はよく頑張った。これからどうするか離すからよくお聞き。ここにいては必ず見つかる。私が行って誤魔化すから、そのすきに千尋はここを抜け出して…千尋いや!行かないで、ここにいて、お願い!ハク様この世界で生き延びるためにはそうするしかないんだ。ご両親を助けるためにも。千尋やっぱり豚になったの夢じゃないんだ…ハク様じっとして…騒ぎが収まったら、裏のくぐり戸から出られる。外の階段を一番下まで下りるんだ。そこにボイラー室の入口がある。火を焚くところだ。中に釜爺という人がいるから、釜爺に会うんだ。千尋釜爺?ハク様その人にここで働きたいと頼むんだ。断られても、粘るんだよ。ここでは仕事を持たない者は、湯婆婆に動物にされてしまう。千尋湯婆婆…って?ハク様会えばすぐに分かる。ここを支配している魔女だ。嫌だとか、帰りたいとか言わせるように仕向けてくるけど、働きたいとだけ言うんだ。辛くても、耐えて機会を待つんだよ。そうすれば、湯婆婆には手は出せない。千尋うん…従業員ハク様ぁー、ハク様ー、どちらにおいでですかー?ハク様いかなきゃ。忘れないで、私は千尋の味方だからね。千尋どうして私の名を知ってるの?ハク様そなたの小さいときから知っている。私の名は――ハクだ。ハク様ハクはここにいるぞ。従業員ハク様、湯婆婆さまが…ハク様分かっている。そのことで外へ出ていた。「階段へ向う千尋。恐る恐る踏み出し、一段滑り落ちる。」千尋ぃやっ!はっ、はぁっ…「もう一段踏み出すと階段が壊れ、はずみで走り出す。」千尋わ…っいやああああーーーーっ!やあぁああああああー!
10~「なんとか下まで降り、そろそろとボイラー室へむかう。」「ボイラー室で釜爺をみて後ずさりし、熱い釜に触ってしまう。」千尋あつっ…!「カンカンカンカン(ハンマーの音)」千尋あの…。すみません。あ、あのー…あの、釜爺さんですか?釜爺ん?…ん、んんーー?千尋…あの、ハクという人に言われてきました。ここで働かせてください!「リンリン(呼び鈴の音)」釜爺ええい、こんなに一度に…チビども、仕事だー!「カンカンカンカンカンカン」釜爺わしゃあ、釜爺だ。風呂釜にこき使われとるじじいだ。チビども、はやくせんか!千尋あの、ここで働かせてください!釜爺ええい、手は足りとる。そこら中ススだらけだからな。いくらでも代わりはおるわい。千尋あっ、ごめんなさい。あっ、ちょっと待って。釜爺じゃまじゃま!千尋…あっ。「重さで潰れたススワタリの石炭を持ち上げる千尋。ススワタリは逃げ帰ってゆく。」
11~千尋あっ、どうするのこれ?ここにおいといていいの?釜爺手ぇ出すならしまいまでやれ!千尋えっ?…「石炭を釜に運ぶと、ススワタリみんなが潰れた真似をしだす。」「カンカンカンカン」釜爺こらあー、チビどもー!ただのススにもどりてぇのか!?あんたも気まぐれに手ぇ出して、人の仕事を取っちゃならね。働かなきゃな、こいつらの魔法は消えちまうんだ。ここにあんたの仕事はねぇ、他を当たってくれ。…なんだおまえたち、文句があるのか?仕事しろ仕事!リンメシだよー。なぁんだまたケンカしてんのー?よしなさいよもうー。うつわは?ちゃんと出しといてって言ってるのに。釜爺おお…メシだー、休憩ー!リンうわ!?人間がいちゃ!…やばいよ、さっき上で大騒ぎしてたんだよ!?釜爺わしの…孫だ。リンまごォ?!釜爺働きたいと言うんだが、ここは手が足りとる。おめぇ、湯婆婆ンとこへ連れてってくれねえか?後は自分でやるだろ。リンやなこった!あたいが殺されちまうよ!釜爺これでどうだ?イモリの黒焼き。上物だぞ。どのみち働くには湯婆婆と契約せにゃならん。自分で行って、運を試しな。リン…チェッ!そこの子、ついて来な!千尋あっ。リン…あんたネェ、はいとかお世話になりますとか言えないの!?千尋あっ、はいっ。リンどんくさいね。はやくおいで。靴なんか持ってどうすんのさ、靴下も!千尋はいっ。リンあんた。釜爺にお礼言ったの?世話になったんだろ?千尋あっ、うっ!…ありがとうございました。釜爺グッドラック!リン湯婆婆は建物のてっぺんのその奥にいるんだ。
12~早くしろよォ。千尋あっ。リン鼻がなくなるよ。千尋っ…リンもう一回乗り継ぐからね。千尋はい。リンいくよ。…い、いらっしゃいませ。お客さま、このエレベーターは上へは参りません。他をお探し下さい。千尋ついてくるよ。リンきょろきょろすんじゃないよ。蛙男到着でございます。右手のお座敷でございます。?…リン。リンはーい。(ドン!)千尋ぅわっ!蛙男なんか匂わぬか?人間だ、おまえ人間くさいぞ。リンそーですかぁー?蛙男匂う匂う、うまそうな匂いだ。おまえなんか隠しておるな?正直に申せ!リンこの匂いでしょ。蛙男黒焼き!…くれぇーっ!リンやなこった。お姉さま方に頼まれてんだよ。蛙男頼む、ちょっとだけ、せめて足一本!リン上へ行くお客さまー。レバーをお引き下さーい。「『二天』につくが、『天』まで千尋を連れて行くおしらさま。」「奥のドアを開けようとする千尋。」湯婆婆…ノックもしないのかい!?千尋やっ!?湯婆婆ま、みっともない娘が来たもんだね。さぁ、おいで。…おいでーな~。千尋わっ!わ…っ!いったぁ~…
13~「頭が寄ってくる。」千尋ひっ、うわぁ、わあっ…わっ!湯婆婆うるさいね、静かにしておくれ。千尋あのー…ここで働かせてください!「魔法で口チャックされる千尋。」湯婆婆馬鹿なおしゃべりはやめとくれ。そんなひょろひょろに何が出来るのさ。ここはね、人間の来るところじゃないんだ。八百万の神様達が疲れをいやしに来るお湯屋なんだよ。それなのにおまえの親はなんだい?お客さまの食べ物を豚のように食い散らして。当然の報いさ。おまえも元の世界には戻れないよ。…子豚にしてやろう。ぇえ?石炭、という手もあるね。へへへへへっ、震えているね。…でもまあ、良くここまでやってきたよ。誰かが親切に世話を焼いたんだね。誉めてやらなきゃ。誰だい、それは?教えておくれな…千尋…あっ。ここで働かせてください!湯婆婆まァだそれを言うのかい!千尋ここで働きたいんです!湯婆婆だァーーーまァーーーれェーーー!湯婆婆なんであたしがおまえを雇わなきゃならないんだい!?見るからにグズで!甘ったれで!泣き虫で!頭の悪い小娘に、仕事なんかあるもんかね!お断りだね。これ以上穀潰しを増やしてどうしようっていうんだい!それとも…一番つらーーいきつーーい仕事を死ぬまでやらせてやろうかぁ…?湯婆婆…ハッ!?坊あーーーーん、あーーん、ああああーーー湯婆婆やめなさいどうしたの坊や、今すぐ行くからいい子でいなさいね…まだいたのかい、さっさと出て行きな!千尋ここで働きたいんです!湯婆婆大きな声を出すんじゃない…うっ!あー、ちょっと待ちなさい、ね、ねぇ~。いい子だから、ほぉらほら~。千尋働かせてください!湯婆婆わかったから静かにしておくれ!
14~おおぉお~よ~しよし~…「紙とペンが千尋の方へ飛んでくる。」湯婆婆契約書だよ。そこに名前を書きな。働かせてやる。その代わり嫌だとか、帰りたいとか言ったらすぐ子豚にしてやるからね。千尋あの、名前ってここですか?湯婆婆そうだよもぅぐずぐずしないでさっさと書きな!まったく…つまらない誓いをたてちまったもんだよ。働きたい者には仕事をやるだなんて…書いたかい?千尋はい…あっ。湯婆婆フン。千尋というのかい?千尋はい。湯婆婆贅沢な名だねぇ。今からおまえの名前は千だ。いいかい、千だよ。分かったら返事をするんだ、千!千は、はいっ!ハク様お呼びですか。湯婆婆今日からその子が働くよ。世話をしな。ハク様はい。…名はなんという?千え?ち、…ぁ、千です。ハク様では千、来なさい。千ハク。あの…ハク様無駄口をきくな。私のことは、ハク様と呼べ。千…っ父役いくら湯婆婆さまのおっしゃりでも、それは…兄役人間は困ります。ハク様既に契約されたのだ。父役なんと…千よろしくお願いします。湯女あたしらのとこには寄こさないどくれ。湯女人臭くてかなわんわい。ハク様ここの物を三日も食べれば匂いは消えよう。それで使い物にならなければ、焼こうが煮ようが好きにするがいい。仕事に戻れ!リンは何処だ。リンえぇーっ、あたいに押しつけんのかよぅ。
15~ハク様手下をほしがっていたな。父役そうそう、リンが適役だぞ。リンえーっ。ハク様千、行け。千はいっ。リンやってらんねぇよ!埋め合わせはしてもらうからね!兄役はよいけ。リンフン!…来いよ。リン…おまえ、うまくやったなぁ!千えっ?リンおまえトロイからさ、心配してたんだ。油断するなよ、わかんないことはおれに聞け。な?千うん。リン…ん?どうした?千足がふらふらするの。リンここがおれたちの部屋だよ。食って寝りゃ元気になるさ。前掛け。自分で洗うんだよ。…袴。チビだからなぁ…。でかいな。千リンさん、あの…リンなに?千ここにハクっていうひと二人いるの?リン二人ぃ?あんなの二人もいたらたまんないよ。…だめか。あいつは湯婆婆の手先だから気をつけな。千…んっ…ん…リン…おかしいな…あああ、あったあった。ん?おい、どうしたんだよ?しっかりしろよぅ。女うるさいなー。なんだよリン?リン気持ち悪いんだって。新入りだよ。「湯婆婆が鳥になって飛んでいく。見送るハク。」「寝ている千のもとへ、ハクが忍んでくる。」ハク様橋の所へおいで。お父さんとお母さんに会わせてあげる。「部屋を抜け出す千。」千靴がない。
16~…あ。ありがとう。「ススワタリに手を振る千。」「橋の上でカオナシに会う。」ハク様おいで。「花の間を通り畜舎へ。」千…おとうさんおかあさん、私よ!…せ、千よ!おかあさん、おとうさん!病気かな、ケガしてる?ハク様いや。おなかが一杯で寝ているんだよ。人間だったことは今は忘れている。千うっ…くっ…おとうさんおかあさん、きっと助けてあげるから、あんまり太っちゃだめだよ、食べられちゃうからね!「垣根の下でうずくまる千。ハクが服を渡す。」ハク様これは隠しておきな。千あっ!…捨てられたかと思ってた。ハク様帰るときにいるだろう?千これ、お別れにもらったカード。ちひろ?…千尋って…私の名だわ!ハク様湯婆婆は相手の名を奪って支配するんだ。いつもは千でいて、本当の名前はしっかり隠しておくんだよ。千私、もう取られかけてた。千になりかけてたもん。ハク様名を奪われると、帰り道が分からなくなるんだよ。私はどうしても思い出せないんだ。千ハクの本当の名前?ハク様でも不思議だね。千尋のことは覚えていた。お食べ、ご飯を食べてなかったろ?千食べたくない…ハク様千尋の元気が出るように呪い(まじない)をかけて作ったんだ。お食べ。千…ん…ん、んっ……うわぁああーー、わぁああーーー、あぁああーーん…ハク様つらかったろう。さ、お食べ。千ひっく…うぁあーーん…ハク様一人で戻れるね?千うん。ハクありがとう、私がんばるね。
17~ハク様うん。「帰り際、空に昇る白い竜を見つける。」千わぁっ。「釜爺が水を飲みに起き、寝ている千を見つける。座布団を掛けてやる。」「湯婆婆が戻ってくる。」リンどこ行ってたんだよ。心配してたんだぞ。千ごめんなさい。「名札を掛けるのに手間取る千。」湯女じゃまだねぇ。リン千、もっと力はいんないの?兄役リンと千、今日から大湯番だ。リンえぇーっ、あれは蛙の仕事だろ!兄役上役の命令だ。骨身を惜しむなよ。「水を捨てに来る千。外に立っているカオナシを見つける。」千あの、そこ濡れませんか?リン千、早くしろよ!千はーーい。…ここ、開けときますね。湯女リン、大湯だって?リンほっとけ!リンひでぇ、ずーっと洗ってないぞ。
18~「転ぶ千。」千うわっ!…あーっ。リンここの風呂はさ、汚しのお客専門なんだよ。うー、こびりついてて取れやしねえ。兄役リン、千。一番客が来ちまうぞ。リンはーーい今すぐ!チッ、下いびりしやがって。一回薬湯入れなきゃダメだ。千、番台行って札もらってきな。千札?…うわっ!リン薬湯の札だよ!千はぁーい。…リンさん、番台ってなに?湯婆婆ん?…なんだろうね。なんか来たね。雨に紛れてろくでもないものが紛れ込んだかな?「街を進んでくるオクサレさま。」番台蛙そんなもったいないことが出来るか!…おはようございます!良くお休みになられましたか!湯女春日様。番台蛙はい、硫黄の上!…いつまでいたって同じだ、戻れ戻れ!手でこすればいいんだ!おはようございます!…手を使え手を!千でも、あの、薬湯じゃないとダメだそうです。番台蛙わからんやつだな…あっ、ヨモギ湯ですね。どーぞごゆっくり…千あっ…「背後にカオナシを見つけて会釈する千。」番台蛙んん?「リリリリリ」
19~番台蛙はい番台です!…あっ、…うわっ!?千あっ!ありがとうございます!番台蛙あー、違う!こら待て、おい!湯婆婆どしたんだい!?番台蛙い、いえ、なんでもありません。湯婆婆なにか入り込んでるよ。番台蛙人間ですか。湯婆婆それを調べるんだ。今日はハクがいないからね。リンへぇーずいぶんいいのくれたじゃん。これがさ、釜爺のとこへ行くんだ。混んでないからすぐ来るよきっと。これを引けばお湯が出る。やってみな。千うわっ!…リン千てほんとドジなー。千うわ、すごい色…リンこいつにはさ、ミミズの干物が入ってんだ。こんだけ濁ってりゃこすらなくても同じだな。いっぱいになったらもう一回引きな、止まるから。もう放して大丈夫だよ。おれ朝飯取ってくんな!千はぁーい。…あっ。「カオナシを見つける。風呂の縁から落ちる千。」千うわっ!…いったぃ…った…あの、お風呂まだなんです。わ…こんなにたくさん…えっ、私にくれるの?カオナシあ、あ、…千あの…それ、そんなにいらない。カオナシあ、…千だめよ。ひとつでいいの。カオナシあ…千え…あっ!「釜から水があふれる。」千うわぁっ!
20~父役奥様!湯婆婆クサレ神だって!?父役それも特大のオクサレさまです!従業員まっすぐ橋へ向かってきます!従業員達お帰り下さい、お帰り下さい!青蛙お帰り下さい、お引き取り下さい、お帰り下さい!うっ…くっさいぃ~…!湯婆婆ぅう~ん…おかしいね。クサレ神なんかの気配じゃなかったんだが…来ちまったものは仕方がない。お迎えしな!こうなったら出来るだけはやく引き取ってもらうしかないよ!兄役リンと千、湯婆婆様がお呼びだ。千あ、はいっ!湯婆婆いいかい、おまえの初仕事だ。これから来るお客を大湯で世話するんだよ。千…あの~…湯婆婆四の五の言うと、石炭にしちまうよ。わかったね!父役み、見えました…ウッ…湯婆婆?千ウゥッ…!湯婆婆…おやめ!お客さんに失礼だよ!が?が?…ヨクオコシクダしゃいマシタ…え?あオカネ…千!千!早くお受け取りな!千は、はいっ!(ベチャッ)千うゥ…!湯婆婆ナニしてるんだい…!ハヤクご案内しな!千どどうぞ…リンセーーーン!うぇっ…くっせえ…あっ、メシが!湯婆婆窓をお開け!全部だよ!「大湯に飛び込み、千に何かを促すオクサレさま。」
21~千えっ?ぁ、…ちょっと待って!「上から見ている湯婆婆と父役。」湯婆婆フフフフ、汚いね。父役笑い事ではありません。湯婆婆あの子どうするかね。…ほぉ、足し湯をする気だよ。父役あぁああ、汚い手で壁に触りおって!千あっ…あっ!「札を下げようとして落とす千。他の札を取って釜爺に送る。」湯婆婆んん?千に新しい札あげたのかい?父役まさかそんなもったいない…千わっ!「湯の紐を引きながら落ちる千。ヘドロにはまる。」父役あああーっ、あんな高価な薬湯を!「オクサレさまに引っ張り出される千。何かに手を触れる。」千…?あっ?リンセーーーン!千どこだ!千リンさん!リンだいじょぶかあ!釜爺にありったけのお湯出すように頼んできた!最高の薬湯おごってくれるって!千ありがとう!あの、ここにトゲみたいのが刺さってるの!リントゲーー?
22~千深くて取れないの!湯婆婆トゲ?トゲだって?…ううーん…下に人数を集めな!父役えぇっ?湯婆婆急ぎな!千とリン、そのお方はオクサレ神ではないぞ!このロープをお使い!千はいっ!リンしっかり持ってな!千はいっ!湯婆婆ぐずぐずするんじゃないよ!女も力を合わせるんだ!千結びました!湯婆婆んーーー湯屋一同、心をこめて!エイヤーーーーソーーーーレーーーー一同そーーーれ、そーーーーれ!そーーーれ、そーーーーれ!千自転車?湯婆婆やはり!さぁ、きばるんだよ!「オクサレさまからたくさんのゴミが出てくる。」河の主はァーーー…千うっわっ…わあっ!「水の流れに包まれる千。」リンセーーーン!だいじょぶかあ!?河の主…佳き哉…千あっ…「千の手に残る団子。」湯婆婆んん…?
23~従業員砂金だ!砂金だ!わあーっ!湯婆婆静かにおし!お客さまがまだおいでなんだよ!千!お客さまの邪魔だ、そこを下りな!大戸を開けな!お帰りだ!河の主あははははははははは…神様達やんやーーやんやーー!湯婆婆セーン!よくやったね、大もうけだよ!ありゃあ名のある河の主だよ~。みんなも千を見習いな!今日は一本付けるからね。みんなおぉーー!湯婆婆さ、とった砂金を全部だしな!みんなえぇーーっ!そりゃねえやな…「仕事が終わって、部屋の前でくつろぐ千。」リン食う?かっぱらってきた。千ありがとう。リンあー、やれやれ…千…ハク、いなかったねー。リンまぁたハクかよー。…あいつ時々いなくなるんだよ。噂じゃさぁ、湯婆婆にやばいことやらされてんだって。千そう…女リン、消すよー。リンあぁ。千街がある…海みたい。リンあたりまえじゃん、雨が降りゃ海くらいできるよ。おれいつかあの街に行くんだ。こんなとこ絶対にやめてやる。「ふと、団子をかじってみる千。」千ヴッ…うぅっ…リンん?…どうした?「人気のない大湯に忍び込む青蛙。」
24~青蛙ん?んんーーっ……砂金だ!…あ。おぬし!何者だ。客人ではないな。そこに入ってはいけないのだぞ!…おっ!おっ、金だ金だ!こ、これをわしにくれるのか?カオナシあ、あ…青蛙き、金を出せるのか?カオナシあ、あ、…青蛙くれ~っ!青蛙わあっ!「カオナシにひとのみにされる青蛙。」兄役誰ぞそこにおるのか?消灯時間はとうに過ぎたぞ。うっ…?カオナシ兄役どの、おれは腹が減った。腹ぺこだ!兄役そ、その声は…カオナシ前金だ、受け取れ。わしは客だぞ、風呂にも入るぞ。みんなを起こせぇっ!千お父さんお母さん、河の神様からもらったお団子だよ。これを食べれば人間に戻れるよ、きっと!「たくさんの豚が一斉にこっちを見る。」千お父さんお母さんどこ?おとうさーん…千ハッ!…やな夢。…リン?…誰もいない…千わぁっ、本当に海になってる!ここからお父さんたちのとこ見えるんだ。釜爺がもう火を焚いてる。そんなに寝ちゃったのかな…兄役お客さまがお待ちだ、もっと早くできんのか!?父役生煮えでもなんでもいい、どんどんお持ちしろ!リンセーン!
25~千リンさん。リン今起こしに行こうと思ったんだ。見な!本物の金だ、もらったんだ。すげー気前のいい客が来たんだ。「大湯に浸かってごちそうを食べまくるカオナシ。」カオナシおれは腹ぺこだ。ぜーーんぶ持ってこい!千そのお客さんって…リン千も来い。湯婆婆まだ寝てるからチャンスだぞ。千あたし釜爺のとこ行かなきゃ。リン今釜爺のとこ行かない方がいいぞ、たたき起こされてものすごい不機嫌だから!女たちリン、もいっかい行こ!リンああ!「部屋に戻る千。」千…おとうさんとおかあさん、分からなかったらどうしよう。おとうさんあんまり太ってたらやだなー。はあ…「海の中を白い竜が式神に追いかけられていく。」千ん?…あぁっ!橋のとこで見た竜だ!こっちに来る!なんだろう、鳥じゃない!…ひゃっ!ハクーっ、しっかりーっ!こっちよーっ!…ハク!?ハクーっ!「部屋に竜が飛び込む。窓を閉めようとする千に、式神が飛びかかる。」千うわぁっ!わぁああーっ!…あっ?…ただの紙だ…
26~千ハクね、ハクでしょう?ケガしてるの?あの紙の鳥は行ってしまったよ。もう大丈夫だよ。…わっ!湯婆婆のとこへ行くんだ。どうしよう、ハクが死んじゃう!「竜を追って走り出す千の肩に式神が張り付く。」兄役そーれっ、さーてはこの世に極まれる?お大尽さまのおなりだよ?そーれっみんないらっしゃいませ!兄役それおねだり?あ、おねだり?おねだり?「騒ぎの中をエレベータへ駆けていく千。」蛙男おっ…と。こら、何をする。千上へ行くんです。蛙男駄目だ駄目だ。…ん?あっ!血だ!千あっ…兄役どけどけ!お客さまのお通りだ!千あ、あのときはありがとうございます。兄役何をしてる、早ぅど…うっ!?カオナシあ、あ、あ…「千に両手いっぱいの金を差し出す。」カオナシえ、え、…千…欲しくない。いらない!カオナシえ、え…千私忙しいので、失礼します!「こぼした金に群がる群衆をすり抜けて千が出ていく。」兄役ええい、静まれ!静まらんか!下がれ下がれ!これは、とんだご無礼を致しました。なにぶん新米の人間の小娘でございまして…カオナシ…おまえ、何故笑う。笑ったな。兄役ぇえっ、めっそうもない!
27~兄役?湯女わっ、わっ、わああっ!「丸呑みにされる兄役と湯女。皆がパニックで散っていく。」「窓からパイプづたいにはしごへ行こうとする千。走り出すと、パイプが外れて崩れていく。」千わっ、わっ、わっ、わあっっ!「かろうじてはしごに飛びつく千。はしごを登り出す。」千はぁっ、はぁっ…あっ!湯婆婆!うっ、くっ…くっ!くっ…あぁっ!「窓を押し開けようとする千。式神がカギを外して中に落ちる。坊の部屋へ。」湯婆婆全くなんてことだろねぇ。千!湯婆婆そいつの正体はカオナシだよ。そう、カオナシ!欲にかられてとんでもない客を引き入れたもんだよ。あたしが行くまでよけいなことをすんじゃないよ!…あぁあ~、敷物を汚しちまって。おまえたち、ハクを片づけな!千はっ!湯婆婆もうその子は使いもんにならないよ!千あっ…あ、あ、あ…「クッションの中に隠れる千。湯婆婆が来てクッションを探る。」湯婆婆ばぁ~。坊んんーー、ああー…ああーー…湯婆婆もぅ坊はまたベッドで寝ないで~。坊あ…あああーーーん、ああーん…湯婆婆あぁああごめんごめん、いい子でおねんねしてたのにねぇ。ばぁばはまだお仕事があるの。(ブチュ)いいこでおねんねしててねぇ~。
28~千…あっ!…ぅう痛い離してっ!あっ、助けてくれてありがとう、私急いで行かなくちゃならないの、離してくれる?坊おまえ病気うつしにきたんだな。千えっ?坊おんもにはわるいばいきんしかいないんだぞ。千私、人間よ。この世界じゃちょっと珍しいかもしれないけど。坊おんもは体にわるいんだぞ。ここにいて坊とおあそびしろ。千あなた病気なの?坊おんもにいくと病気になるからここにいるんだ。千こんなとこにいた方が病気になるよ!…あのね、私のとても大切な人が大けがしてるの。だからすぐいかなきゃならないの。お願い、手を離して!坊いったらないちゃうぞ。坊がないたらすぐばぁばがきておまえなんかころしちゃうぞ。こんな手すぐおっちゃうぞ。千うぅ痛い痛い!…ね、あとで戻ってきて遊んであげるから。坊ダメ今あそぶの!千うぅっ……坊…あ?千血!わかる?!血!坊…うわぁあーーああぁあぁあーーーー!千あっ!ハクーーーー!何すんの、あっち行って!しっしっ!ハク、ハクね!?しっかりして!静かにして!ハク!?…あっ!「湯バードにたかられる千。その隙に頭たちがハクを落とそうとする。」千あっ、わっ…あっち行って!あっ!だめっ!「部屋から坊が出てくる。」坊んんっ…んんんっ…血なんかへいきだぞ。あそばないとないちゃうぞ。千待って、ね、いい子だから!坊坊とあそばないとないちゃうぞ…ぅええ~~…千お願い、待って!式神…うるさいねぇ。静かにしておくれ。
29~坊ぇえ…?式神あんたはちょっと太り過ぎね。「床から銭婆が現われる。」銭婆やっぱりちょっと透けるわねえ。坊ばぁば…?銭婆やれやれ。お母さんとあたしの区別もつかないのかい。「魔法でねずみにされる坊。」銭婆その方が少しは動きやすいだろ?さぁてと…おまえたちは何がいいかな?「湯バードはハエドリに、頭は坊にされる。」千あっ…銭婆ふふふふふふ、このことはナイショだよ。誰かに喋るとおまえの口が裂けるからね。千あなたは誰?銭婆湯婆婆の双子の姉さ。おまえさんのおかげでここを見物できて面白かったよ。さぁその竜を渡しな。千ハクをどうするの?ひどいケガなの。銭婆そいつは妹の手先のどろぼう竜だよ。私の所から大事なハンコを盗みだした。千ハクがそんなことしっこない!優しい人だもん!銭婆竜はみんな優しいよ…優しくて愚かだ。魔法の力を手に入れようとして妹の弟子になるなんてね。この若者は欲深な妹のいいなりだ。さぁ、そこをどきな。どのみちこの竜はもう助からないよ。ハンコには守りの呪い(まじない)が掛けてあるからね、盗んだものは死ぬようにと…千…いや!だめ!「坊になった頭が坊ネズミとハエドリを虐めている。」銭婆なんだろね、この連中は。これおやめ、部屋にお戻りな。白竜グゥ…!
30~「隙をついて竜の尾が式神を引き裂く。」銭婆!…あぁら油断したねぇ~…「反動で落ちる竜と千、坊ネズミ、ハエドリ。」千ハク、あ、きゃああーーーっ!ハクーーーっ!「落ちていく中で水の幻影が浮かぶ。」「力を振り絞って横穴に入る竜。換気扇を破ってボイラー室に出る。」釜爺なっ…わあっ!千ハク!釜爺なにごとじゃい!ああっ、待ちなさい!千ハクっ!苦しいの!?釜爺こりゃあ、いかん!千ハクしっかり!どうしよう、ハクが死んじゃう!釜爺体の中で何かが命を食い荒らしとる。千体の中?!釜爺強い魔法だ、わしにゃあどうにもならん…千ハク、これ河の神様がくれたお団子。効くかもしれない、食べて!ハク、口を開けて!ハクお願い、食べて!…ほら、平気だよ。釜爺そりゃあ、苦団子か?千あけてぇっ…いい子だから…大丈夫。飲み込んで!白竜グォウッ、グオッ…!釜爺出たっ、コイツだ!千あっ!ハンコ!釜爺逃げた!あっちあっち、あっち!千あっ、あっ!あぁあああっ、ああああっ!(ベチャッ!)釜爺えーんがちょ、せい!えーんがちょ!切った!千おじさんこれ、湯婆婆のおねえさんのハンコなの!釜爺銭婆の?…魔女の契約印か!そりゃあまた、えらいものを…千ああっ、やっぱりハクだ!おじさん、ハクよ!釜爺おお…お…千ハク!ハク、ハクーっ!
31~おじさん、ハク息してない!釜爺まだしとるがな。…魔法の傷は油断できんが。釜爺…これで少しは落ち着くといいんじゃが…ハクはな、千と同じように突然ここにやってきてな。魔法使いになりたいと言いおった。ワシは反対したんだ、魔女の弟子なんぞろくな事がないってな。聞かないんだよ。もう帰るところはないと、とうとう湯婆婆の弟子になっちまった。そのうちどんどん顔色が悪くなるし、目つきばかりきつくなってな…千釜爺さん、私これ、湯婆婆のおねえさんに返してくる。返して、謝って、ハクを助けてくれるよう頼んでみる。お姉さんのいるところを教えて。釜爺銭婆の所へか?あの魔女は怖えーぞ。千お願い。ハクは私を助けてくれたの。わたし、ハクを助けたい。釜爺うーん…行くにはなぁ、行けるだろうが、帰りがなぁ…。待ちなさい。たしか…どこに入れたか…千みんな、私の靴と服、お願いね。リン千!ずいぶんさがしたんだぞ!千リンさん。リンハクじゃん。…なんかあったのかここ。なんだそいつら?千新しい友達なの。ねっ。リン湯婆婆がカンカンになっておまえのこと探してるぞ。千えっ?リン気前がいいと思ってた客がカオナシって化けもんだったんだよ。湯婆婆は千が引き入れたって言うんだ。千あっ…そうかもしれない。リンええっ!ほんとかよ!千だって、お客さんだと思ったから。リンどうすんだよ、あいつもう三人も呑んじゃったんだぞ。釜爺あったこれだ!千あったぞ!リンじいさん今忙しいんだよ。釜爺これが使える。リン電車の切符じゃん、どこで手に入れたんだこんなの。釜爺四十年前の使い残りじゃ。いいか、電車で六つ目の沼の底という駅だ。千沼の底?釜爺とにかく六つ目だ。千六つ目ね。釜爺間違えるなよ。昔は戻りの電車があったんだが、近頃は行きっぱなしだ。それでも行くか千?千うん、帰りは線路を歩いてくるからいい。
32~リン湯婆婆はどうすんだよ?千これから行く。ハク、きっと戻ってくるから、死んじゃだめだよ。リン…何がどうしたの?釜爺わからんか。愛だ、愛。湯女きゃああぁーーっ!ま、ますます大きくなってるよ!湯女いやだ、あたい食われたくない!湯女来たよ!父役千か、よかった、湯婆婆様ではもう抑えられんのだ。湯婆婆なにもそんなに暴れなくても、千は来ますよ。カオナシ千はどこだ。千を出せ!父役さ、急げ。湯婆婆様、千です。湯婆婆遅い!…お客さま、千が来ましたよ。ほんのちょっとお待ち下さいね。何をぐずぐずしてたんだい!このままじゃ大損だ、あいつをおだてて絞れるだけ金を絞りだせ…ん?坊ネズミチュー。湯婆婆なんだいその汚いネズミは。千えっ、あのー、ご存じないんですか?湯婆婆知る訳ないだろ。おーいやだ。さ、いきな!…ごゆっくり。父役千ひとりで大丈夫でしょうか。湯婆婆おまえが代わるかい?父役エっ?湯婆婆フン!カオナシこれ、食うか?うまいぞー。金を出そうか?千の他には出してやらないことにしたんだ。こっちへおいで。千は何がほしいんだい?言ってごらん。千あなたはどこから来たの?私すぐ行かなきゃならないとこがあるの。カオナシウゥッ…千あなたは来たところへ帰った方がいいよ。私がほしいものは、あなたにはぜったい出せない。カオナシグゥ…千おうちはどこなの?お父さんやお母さん、いるんでしょ?カオナシイヤダ…イヤダ…サビシイ…サビシィ…千おうちがわからないの?カオナシ千欲しい…千欲しい…欲しがれ。千私を食べる気?
33~カオナシそれ…取れ…坊ネズミチュウ!(ガブ)カオナシケッ…千私を食べるなら、その前にこれを食べて。本当はお父さんとお母さんにあげたかったんだけど、あげるね。カオナシ…ウッ!グハァ…ゲホ、ゲホ…セェン…小娘が、何を食わし…オグゥ…「カオナシが吐きながら千を追いかける。」湯婆婆みんなお退き!お客さまとて許せぬ!カオナシオグゥ…!湯婆婆あらっ!?千こっちだよー!こっちー!カオナシグゥゥ…「逃げ回る千を追いかけるカオナシ。湯女と兄役を吐き出す。」カオナシグハァッ…!…ハァッ、ハァッ…許せん…「外に出ると、リンが盥船を出して待っている。」リンセーーン!こっちだー!千こっーちだよー!リン呼んでどうすんだよ!カオナシあ、あ、…千あの人湯屋にいるからいけないの。あそこを出た方がいいんだよ。リンだってどこ連れてくんだよー!千わかんないけど。リンわかんないって…!…あーあついてくんぞあいつ…カオナシ…ごふっ!「青蛙を吐き出すカオナシ。」
34~青蛙ん?リンこっから歩け。千うん。リン駅は行けば分かるって。千ありがとう。リン必ず戻って来いよ!千うん!リンセーーン!おまえのことどんくさいって言ったけど、取り消すぞーー!カオナシ!千に何かしたら許さないからな!千あれだ!電車が来た。くるよっ。千あの、沼の底までお願いします。えっ?…あなたも乗りたいの?カオナシあ、あ、…千あの、この人もお願いします。カオナシあ、あ、…千おいで。おとなしくしててね。「ボイラー室で目覚めるハク。釜爺を揺り起こす。」ハク様おじいさん。釜爺ん?んん…おおハク、気が付いた。ハク様おじいさん、千はどこです。何があったのでしょう、教えてください。釜爺おまえ、なにも覚えてないのか?ハク様…切れ切れにしか思い出せません。闇の中で千尋が何度も私を呼びました、その声を頼りにもがいて…気が付いたらここに寝ていました。釜爺そうか、千尋か。あの子は千尋というのか。…いいなあ、愛の力だなあ…「ガウン姿で暖炉の前に座る湯婆婆。」
35~湯婆婆これっぱかしの金でどう埋め合わせするのさ。千のバカがせっかくのもうけをフイにしちまって!青蛙で、でも、千のおかげでおれたち助かったんです。湯婆婆おだまり!みんな自分でまいた種じゃないか。それなのに勝手に逃げ出したんだよ。あの子は自分の親を見捨てたんだ!親豚は食べ頃だろ、ベーコンにでもハムにでもしちまいな。ハク様お待ち下さい。青蛙ハク様!湯婆婆なぁんだいおまえ。生きてたのかい。ハク様まだ分かりませんか?大切なものがすり替わったのに…湯婆婆ずいぶん生意気な口を利くね。いつからそんなに偉くなったんだい?フン…「真っ先に金を確かめる湯婆婆を哀れげな瞳で見るハク。」「ふと坊に目を向け術を解くと、頭たちが逃げていく。」湯婆婆な…あ…あ…「金塊も土に代わる。」湯婆婆…ああ…きぃいいいーーー坊ーーーー!青蛙土くれだ!湯婆婆坊ーーーーーー!どこにいるの、坊ーーーー!出てきておくれ、坊ーー!坊、坊!…おぉのぉれぇぇええーーー!キィイイイーー!あぁたしの坊をどこへやったぁーーー!ハク様銭婆のところです。湯婆婆銭婆…?…あぁ…湯婆婆なるほどね。性悪女め…それであたしに勝ったつもりかい。で!?どうすんだい!?ハク様坊を連れ戻してきます。その代わり、千と両親を人間の世界へ戻してやってください。湯婆婆それでおまえはどうなるんだい!?その後あたしに八つ裂きにされてもいいんかい!?
36~千この駅でいいんだよね。…行こう。「疲れて坊ネズミを持ち上げられないハエドリ。坊ネズミが自分で歩き出す。」千肩に乗っていいよ。「坊ネズミは無視して歩き続ける。」「一本足の電灯が跳んできて、家まで道案内をする。」銭婆おはいり。千失礼します。銭婆入るならさっさとお入り。千おいで。銭婆みんなよく来たね。千あっ、あのっ…!銭婆まあお座り。今お茶を入れるからね。千銭婆さん、これ、ハクが盗んだものです。お返しに来ました。銭婆おまえ、これがなんだか知ってるかい?千いえ。でも、とっても大事なものだって。ハクの代わりに謝りに来ました。ごめんなさい!銭婆…おまえ、これを持ってて何ともなかったかい?千えっ?銭婆あれ?守りの呪い(まじない)が消えてるね。千…すいません。あのハンコに付いてた変な虫、あたしが踏みつぶしちゃいました!銭婆踏みつぶしたぁ?…あっはははははは。あんたその虫はね、妹が弟子を操るために竜の腹に忍び込ませた虫だよ。踏みつぶした…はっはははは…さぁお座り。おまえはカオナシだね。おまえもお座りな。千あっ、あの…この人たちを元に戻してあげてください。銭婆おや?あんたたち魔法はとっくに切れてるだろ。戻りたかったら戻りな。(ぷるぷる)銭婆あたしたち二人で一人前なのに気が合わなくてねぇ。ほら、あの人ハイカラじゃないじゃない?魔女の双子なんてやっかいの元ね。おまえを助けてあげたいけど、あたしにはどうすることも出来ないよ。この世界の決まりだからね。両親のことも、ボーイフレンドの竜のことも、自分でやるしかない。千でも、あの、ヒントかなにかもらえませんか?ハクと私、ずっとまえに会ったことがあるみたいなんです。
37~銭婆じゃ話は早いよ。一度あったことは忘れないものさ…想い出せないだけで。ま、今夜は遅いからゆっくりしていきな。おまえたち手伝ってくれるかい?銭婆ほれ、がんばって。そうそう、うまいじゃないか。ほんとに助かるよ。魔法で作ったんじゃ何にもならないからねぇ。そこをくぐらせて…そう、二回続けるんだ。千おばあちゃん、やっぱり帰る。…だって…こうしてる間にも、ハクが死んじゃうかもしれない。お父さんやお母さんが食べられちゃうかもしれない…。銭婆まぁ、もうちょっとお待ち。…さぁ、できたよ。髪留めにお使い。千わぁ…きれい。銭婆お守り。みんなで紡いだ糸を編み込んであるからね。千ありがとう。銭婆いい時に来たね。お客さんだよ、出ておくれ。千はい。千ああっ…!ハク!ハク、会いたかった…ケガは?もう大丈夫なの?よかったぁ…銭婆ふふふ、グッドタイミングね。千おばあちゃん、ハク生きてた!銭婆白竜、あなたのしたことはもう咎めません。そのかわり、その子をしっかり守るんだよ。さぁ坊やたち、お帰りの時間だよ。また遊びにおいで。坊ネズミちゅう。銭婆おまえはここにいな。あたしの手助けをしておくれ。カオナシあ、あ…千おばあちゃん!…ありがとう、私行くね。銭婆だいじょうぶ。あんたならやり遂げるよ。千私の本当の名前は、千尋っていうんです。銭婆ちひろ。いい名だね。自分の名前を大事にね。千はい!銭婆さ、お行き。千うん!おばあちゃん、ありがとう!さよなら!「竜に乗って飛び立つ千。」「記憶がフラッシュバックする。水に流れていく靴。水に落ちるだれか…。」千…ハク、聞いて。お母さんから聞いたんで自分では覚えてなかったんだけど、私、
38~小さいとき川に落ちたことがあるの。その川はもうマンションになって、埋められちゃったんだって…。でも、今思い出したの。その川の名は…その川はね、琥珀川。あなたの本当の名は、琥珀川…「瞬間、白竜から輝く鱗が剥がれ落ち、ハクの姿になっていく。」千ああっ!ハク様千尋、ありがとう。私の本当の名は、ニギハヤミコハクヌシだ。千ニギハヤミ…?ハク様ニギハヤミ、コハクヌシ。千すごい名前。神様みたい。ハク様私も思いだした。千尋が私の中に落ちたときのこと。靴を拾おうとしたんだね。千そう。琥珀が私を浅瀬に運んでくれたのね。嬉しい…「朝。油屋の前で皆が待っている。」リン帰ってきたーー!みんなおおっ…湯婆婆坊は連れて戻ってきたんだろうね?…えっ?坊ばぁば!湯婆婆坊ーー!ケガはなかったかい!?ひどい目にあったねぇ!…坊!あなた一人で立てるようになったの?え?ハク様湯婆婆様、約束です!千尋と両親を人間の世界に戻してください!湯婆婆フン!そう簡単にはいかないよ、世の中には決まりというものがあるんだ!みんなブー、ブー!湯婆婆うるさいよっ!坊ばぁばのケチ。もうやめなよ。湯婆婆へっ?坊とても面白かったよ、坊。湯婆婆へぇっ?ででででもさぁ、これは決まりなんだよ?じゃないと呪いが解けないんだよ?坊千を泣かしたらばぁば嫌いになっちゃうからね。湯婆婆そ、そんな…千おばあちゃん!湯婆婆おばあちゃん?千今、そっちへ行きます。
39~千掟のことはハクから聞きました。湯婆婆フン、いい覚悟だ。これはおまえの契約書だよ、こっちへおいで。…坊、すぐ終わるからねぇ。千大丈夫よ。湯婆婆この中からおまえのお父さんとお母さんを見つけな。チャンスは一回だ。ピタリと当てられたらおまえたちゃ自由だよ。千…?おばあちゃんだめ、ここにはお父さんもお母さんもいないもん。湯婆婆いない!?それがおまえの答えかい?千……うん!「ボン!と破れ消える契約書。」湯婆婆ヒッ!?豚に化けた従業員たちおお当たりーー!みんなやったあ!よっしゃーーー!千尋みんなありがとう!湯婆婆行きな!おまえの勝ちだ!早くいっちまいな!千尋お世話になりました!湯婆婆フン!千尋さよなら!ありがとう!千尋ハク!ハク様行こう!千尋お父さんとお母さんは!?ハク様先に行ってる!千尋水がない…ハク様私はこの先には行けない。千尋は元来た道をたどればいいんだ。でも決して振り向いちゃいけないよ、トンネルを出るまではね。千尋ハクは?ハクはどうするの?ハク様私は湯婆婆と話をつけて弟子をやめる。平気さ、ほんとの名を取り戻したから。元の世界に私も戻るよ。千尋またどこかで会える?ハク様うん、きっと。千尋きっとよ。ハク様きっと。さぁ行きな。振り向かないで。
40~「結んだ手が名残惜しそうに離れる。」「門の入り口で、父と母が待っている。」母千尋ー。なにしてんの、はやく来なさい!千尋ああっ…!お母さん、お父さん!母だめじゃない、急にいなくなっちゃ。父行くよ。千尋お母さん、何ともないの?母ん?引越しのトラック、もう着いちゃってるわよ。「振り向こうとして、とどまる千尋。」父千尋ー。早くおいでー。足下気をつけな。母千尋、そんなにくっつかないでよ。歩きにくいわ。父出口だよ。…あれ?母なぁに?父すげー…あっ、中もほこりだらけだ。母いたずら?父かなあ?母だからやだっていったのよー…母オーライオーライ、平気よ。父千尋、行くよー。母千尋!早くしなさい!「トンネルの向こうを見つめる目を、翻す千尋の髪にあのお守りが光っていた。」おわり
41~『いつも何度でも』呼んでいる胸のどこか奥でいつも心踊る夢を見たいかなしみは数えきれないけれどその向こうできっとあなたに会える繰り返すあやまちのそのたびひとはただ青い空の青さを知る果てしなく道は続いて見えるけれどこの両手は光を抱けるさよならのときの静かな胸ゼロになるからだが耳をすませる生きている不思議死んでいく不思議花も風も街もみんなおなじ呼んでいる胸のどこか奥でいつも何度でも夢を描こうかなしみの数を言い尽くすより同じくちびるでそっとうたおう閉じていく思い出のそのなかにいつも忘れたくないささやきを聞くこなごなに砕かれた鏡の上にも新しい景色が映されるはじまりの朝の静かな窓ゼロになるからだ充たされてゆけ海の彼方にはもう探さない
42~輝くものはいつもここにわたしのなかに見つけられたから
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